株式市場の中心で銘柄への愛を叫ぶ

銘柄に惚れてはいけないのに銘柄に惚れ込んでしまう投資家のメモ

【3277】サンセイランディック (不動産権利調整のリーディングカンパニー) (その1)

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メモ書き。論点がコロコロ変わります。

社会背景

人口減少期に入った日本

人口減少による問題が次第に顕在化してきている。工事現場や飲食業界における人手不足・労働力不足に始まり、事業の根幹が崩れてしまう企業も出て来ている。

代ゼミ、20校閉鎖 全国7校に 浪人生減で業績悪化 (2014年8月23日 日経新聞より一部引用)

大手予備校「代々木ゼミナール」を運営する学校法人高宮学園(東京・渋谷)は全国27カ所の校舎を7カ所に減らす方針を固めた。20カ所では2015年度以降の生徒募集をやめて休校し、事実上閉鎖する。施設の活用法は未定という。代ゼミは大学受験の浪人生を主な対象に運営してきたが、少子化や現役志向の高まりで浪人生が減り、業績が悪化していた。

ストック&リノベーション

代ゼミのニュースは不動産セクターにとっても実は他人事ではない。学生・浪人生の減少のように、人口・購入する30代の減少がこれからじわじわと顕在化してくる。新築ばかりをつくっている企業の先行きは決して明るくないだろう。

近年国が取り組んでいる中古住宅市場の活性化は国にしては比較的積極的に動いているもののようだ。これには「空き家」問題が拡大しつつあるという背景事情があるのだが、国民の資産価値を見かけ上だけでも増やす必要があるからではないか、と個人的には勘ぐっている。住宅市場にはこれまで巨額の投資が行われたのにも関わらず、日本では経年で評価が減少してしまうため投資した額より遥かに少ない評価額にしかならない。

私はマンションリノベーションのインテリックスを有望視しているわけで、リノベーションによる既存ストックの活用は今後必須になると考える。これはそう簡単ではないのだが、以下の条件を満たしていればマンションの躯体を作るのは数百年に1度だってよいと思うのだ。人に近いインフィルの部分こそが一番進歩するので、そこさえ入れ替えれば基本的には住居の評価は新築にかなり近づくのだ。

  • デザインが古くなっていない (明らかにダサイというものはやはり気持ちのよいものではないだろう)
  • 安全性が確保されている (耐震性能)
  • 共用部分のメンテナンスがなされている
コンパクトシティ

リノベーションをする対象の建物がどこにあるか、あるべきか、それを考える時に大事になるのがコンパクトシティ構想である。人口が減少する日本では国土全域のインフラを管理・維持することは壮大な無駄使いなのだ。郵便が日本全国同じ料金で届く、それができるのは国に余裕があるからだ。もうその余裕はないのだ。郵便ならまだしも、電力網・通信網・道路網・鉄道網、どれをとっても日本全国をカバーするのは難しくなる。できなくはないとしても、効率がわるいのだ。

遠くに届けるのではなく、人を近くに集めるアプローチが必要だ。もちろんこれは権利上難しい問題なのだろう。しかしそれをしなければ全体が大きな無駄のもとに衰退するのだ。最少不幸ではなく最多幸福を求めるべきだ。一人の命は地球より重いかもしれない。しかし一人よりは二人の命の方がより重いのだ。

今の日本とは関係がないことなのだが、国土交通省のいう「今後わが国の都市は多極ネットワーク型のコンパクトシティを目指すこととしています」の多極ネットワークという表現は脳・インターネット・宇宙を連想させる。宇宙がその構造をとっている、という事実は成熟した社会がその構造を目指す必然性の存在を感じさせる。
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不動産への見方が革命的に変わる瞬間

不動産は動かない資産。資産。欲しいか?欲しい。駅前一等地のビルが欲しいか?欲しい。田舎の土地が欲しいか?欲しくない。田舎の空き家が欲しいか?欲しくない。都市部の空き家が欲しいか?条件次第。

実家が空き家になった子供はその空き家を資産として捉えるだろうか。自分が住まないのであれば、それがお金を生み出すか、お金にできなければ資産とは捉え難いだろう。買い手も借り手も見つからない空き屋はお金にもできないし、お金も生まない。むしろ固定資産税はとられるし、放置すると近所からの苦情もあるかもしれない。これを資産と捉えることができるか?

おそらくどこかで不動産に対する日本人の見方が変わる時が来る。不動産は「負動産」とか「腐動産」と揶揄される存在になりかねないのだ。それが突然かつ急激に訪れればあらゆる不動産の価値が短期間に毀損しかねない。

そう思うので相続対策でアパートやら投資用マンションを購入するのは短期的な目線でしかないと思うんだな。相続が終わった後にさっさと現金に戻す前提なのかもしれないが、それこそまた空き家の種を蒔く行為だ。不動産にすることが相続対策になること、これも立派に空き家を作る原因ではないのか。

サンセイランディック

不動産権利調整・土地のリノベーション

コンパクトシティを実現するために、小さな区画・多くの権利者(相続でさらにそれが加速する)を集約して、土地・都市を再生する必要がある。そのために必要なノウハウが「権利調整」となるのではないか。法律の知識・現場のノウハウ・人とのコミュニケーション能力のすべてが揃わなければ達成できない「権利調整」が国からも求められるのではないか。そんな可能性をもった企業がサンセイランディックだと考える。今のところは底地・借地の取り扱いや居抜きによる土地再生が主業務だが、不動産セクターにあって、リノベーションとならび未来を感じる事ができる事業内容だ。会社の説明資料にも、「権利調整ノウハウや独自ネットワークを活かした底地以外の社会的問題への取り組み」として、以下の問題が列挙されている。

  • 空き屋問題
  • 耐震問題
  • 相続税
  • 木造密集住宅問題
  • 高齢化

Yahoo!掲示板の投稿で見かけた「土地のリノベーション」という言葉にはハッとさせられた。そのような見方もできるのだと。たしかに以下の様な図を見れば、土地という躯体、建物というインフィルに見えてくる。

株式会社フィンチの「権利調整型開発」より
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2014年12月24日に施行される「改正マンション立て替え円滑化法」によるマンション立て替えも結局のところは「居抜き」の大規模版である。大規模マンションの立て替えは大手デベロッパーが興味を持つところであろうが、地道な交渉ごとなどは確実にアウトソースしたいところだろう。

改正マンション建て替え円滑化法成立、12月施行へ (2014年6月20日 日経新聞より一部引用)

老朽化したマンションの売却と解体の決議要件を緩和する「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律」(改正マンション建て替え円滑化法)が2014年6月18日、参院本会議で可決し、成立した。同年12月をめどに施行する。

耐震性不足など老朽化が進んだマンションで、区分所有者の5分の4が同意すれば、建物の解体と跡地売却を認められるようになる。改正前は原則、区分所有者全員の同意が必要だった。区分所有者が自力で建て替えるのではなく、跡地を買い受けたデベロッパーなど資金力のある企業による土地活用を進めるルートを設ける。

従来も区分所有法は、区分所有者の5分の4の同意があれば建て替えを認めているが、区分所有者の意見調整に時間がかかった。一方、建物の解体や跡地売却は、民法の原則にのっとって区分所有者全員の同意が必要で現実的ではなかった。

経営哲学の「不断:永久に存続する為、八分の力で邁進する」

2013年12月期決算説明資料よりサンセイランディックの「経営哲学」を抜粋する。
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これは「この世に生き残る生物は、 最も強いものではなく、 最も知性の高いものでもなく、 最も変化に対応できるものである」の言葉を思い出させる経営哲学だ。この言葉を意識して社訓を読むと、それぞれ以下のように読める。

中庸:変化を求める社会・環境の変化を見逃さないこと。一つの何かに依存しすぎない、盲目的にならないこと。
質実:変化が必要になったときに動きやすい体制・規模を維持すること。
不断:変化が必要になったときに動ける余力を持っていること。

特に、「永久に存続する為、八分の力で邁進する」が個人的には面白い。リーマンショックでも黒字を維持できた同社だからこそ説得力がある。不動産業は高いレバレッジのかかった仕事をするわけであるから、会社が「全力」でビジネスをしていると、変化が起こった時に対応できる時間も余力もなくなってしまい、大きなダメージを負ってしまう。それを避ける仕組みが社訓に組み込まれていることは、安心感につながる。

また、この八分は会社の勤務スタイルにも現れているようだ。サンセイランディックは不動産業ながら、完全週休2日制かつ残業も少ないようだ(ネットの口コミや求人情報ベースであるが)。同社のビジネスでは「人」がとにかく大事。スキルを持った人の流出が大きなリスクである。だからこそ、社員に無理を強いない勤務スタイルとされていると思われる。

DODAで求人情報を確認してみたが、確かに土日祝日はお休みの様だ。
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その他思ったこと

ユーカリが丘が注目されるのではないか

完全に単なる予想なのだが、「ユーカリが丘」が注目される時がくるのではないか。まだまだ表面的にしか捉えていないのだが、「山万という不動産企業による計画都市」「高齢化をコントロールしている都市(新築を無闇に作らず若年層を毎年計画的に呼び込む)」は評価が高まるのではないか。

一般社団法人 土地総合研究所 定期公演会講演録
「第169回:ユーカリが丘開発の実践を踏まえた街づくり」
山万株式会社 常務取締役 林 新二郎氏

ユーカリが丘に自らが居住することで当事者意識をもって、街を創っていけるのでしょう。この会社が上場をしない・できない(してはユーカリが丘を長期的視点で創れない)と判断したことは正しかったと思うと同時に悲しく思う。なぜならこんな企業こそ応援したいからだ。